終わりに備えて西方へ

日々雑記など。スポーツ、ゲームなんでも

【小説】ウグイ・マーガリィという天使について【森博嗣】

尊い、尊みを感じる、尊いのだわ、、、

これらはたぶん単にかわいいとかじゃなくて、本当に字面通り「尊い」という感情が自然とあふれ出てきたときに言う言葉なんだろうなって思ってた。幼い子供たちのふとした行動に感じたりするのだろう。これらの言葉が使われだしてから今までまだ尊いと感じる瞬間はまだ訪れていなかったが、とうとう僕にもその瞬間が訪れた。

ウグイ・マーガリィ(もうマーガリンでも可)、彼女は森博嗣作品の「Wシリーズ」と呼ばれる小説のキャラクターの一人として登場する。本シリーズは現在8作目の「血か、死か、無か?」まで刊行されているのかな、その4作目「デボラ、眠っているのか?」まで読んだところでこれを書いている。このシリーズを簡単に説明すると、時代背景は今からたぶん約2、300年後のお話。人間は人工細胞を取り入れることによって病気を克服し、長寿を実現している社会である。しかし、人が死ぬことがほとんどなくなった代わりに人間は子どもを産むことが出来なくなった。地球上で人間の子どもは基本的にいなくなった(それでもわずかに子どもが生まれている地域はある)。新たな人間は誕生しなくなった代わりに、人工細胞によって人間と見分けがつかない「ウォーカロン(Walk-Aloneから)」という生命体が存在している。本シリーズの主人公であるハギリ・ソーイ博士は人間とウォーカロンを見分ける技術を開発したため、何者かに命を狙われることになってしまった。で、この主人公を護衛する役目を負っているのがウグイである。

読者にとってウグイ初登場時はウォーカロンの情報が入ってきていることもあり、彼女がウォーカロンじゃないかという感じがするほど、事務的というか組織の人間感が強く出ていた。ハギリ博士に対しても仕事なので護衛します感が出ていてヒロイン的な立場ではあるだろうが特に何も最初は思わなかった。だが、森博嗣作品「S&Mシリーズ」の犀川創平と西之園萌絵が本シリーズではハギリ博士とウグイなのである。だんだん彼らの掛け合いは面白くなっていき、ハギリ博士が好奇心から行動する際に「危険ですから気を付けてください」など最初は普通に注意喚起していたのに、シリーズが進むにつれて「博士!!」といったように明らかに感情が入ってきていて、あらあらあらあらという感じでニヤニヤしながら読み進めていた。最初はハギリ博士とウグイが話していて笑うことなど全くなかったのに、たまーにウグイの表情が緩むのをハギリ博士が見かけたり、どんどん新密度上がっていってんじゃーん!!って思ってたら4作目「デボラ、眠っているのか?」のラストですよ。ハギリ博士は研究に没頭しすぎて少し不眠の気配があるのでカウンセリングを受けていた。ウグイも同伴していたが、カウンセリング自体は少し適当に扱われてしまった。ウグイがあの扱いはひどいとハギリ博士に言うとハギリは「まあまあ冷静に頭に血を登らせてはいけないよ」「私が頭に血が上っていると?」「済まない撤回するよ」「私は博士のためを思って・・(この時点で少しやばい)」「落ち着いてよ。君は良く眠れるほう?夢とか見るの?」「見ますよぉ(この砕けた言い方もやばい)」「夢を見るんだね」「何をおっしゃりたいのですか?」こんな会話をしながら最後に別れて岐路に着く際にハギリ博士が「ウグイ・マーガリン」とわざと間違えて呼びかける。そしたらですよ、ウグイは振り返らず曲がり角を曲がって行ってしまったと思いきや、わざわざ戻ってきてハギリ博士に対してあっかんべーしたんですよ!!あっかんべーですよ!あっかんべー!!!もうダメだなギャップで僕はノックアウト。心底尊いと思った。

まあただウグイ・マーガリィが尊いです、と言いたいだけでした。めでたしめでたし